『山形のだし』☆田舎の食べものと身土不二☆ 第2回


夏は、料理に火を使いたくないことが多い。

 

昔は電子レンジなんかないし、エアコンもないから、食事の用意は一苦労。首に手拭いを巻いて、汗を拭き拭き、昼ご飯の用意をするわけだ。来客から「店屋物とらなくていいから、素麺でいいから」などと言われようものなら、通気と換気の悪い台所で小1時間素麺を茹でる。翌日は、確実に熱中症で起きられなくなる~近年熱中症や水分取れという言葉ができて、本当に良い世の中になったと筆者は思う。

 

素麺でも冷やし中華でも、火は使う。

じゃあ、夏の昼食は、何だったら涼しいままでいられるんだ?

 

究極でいくと、その昔「鉄管ビール」と驚異の別名を誇った、水道の水を冷えたご飯にかけて、水かけご飯を食べた。米そのもののうまさと、昔はミネラルウォーターなんかないしマンションの貯水池もないから、水のうまさでけっこうご飯はさらさら食べられた。

 

次がちょっと小銭がある場合。牛乳かけご飯。これも、聞いて気持ち悪そうだが、意外といける。もうちょっとお金があるときは、コーヒー牛乳ご飯。これもぎりぎりいけた。でも、一番お金持ちの食べ物、フルーツ牛乳ご飯は、子どもには無理だった。

 

さて、昔話は、ここまでとして。

 

山形には、夏野菜をすごく細かく刻んだだけの「だし」という、イメージ的には納豆やとろろ感覚の夏の食べ物がある。おかず漬物。きゅうり、みょうが、大葉、なす、ねぎを1ミリ以下に切り刻んで、昆布だしで和える。

 

それを冷たいご飯にかけて食べる。適度な酸味もあるので、後味さっぱり。昆布からアミノ酸も出るし、塩分も糖分も適度に摂取できる。食べるスポーツドリンクとも言えるだろう。

以前は、山形に行かないと食べられなかった。できたて(切って混ぜたばかりのではなく、適度に味が染みたものをできたてという)は、このうえもなくおいしい。ご飯二膳どころか、一釜食べてしまうくらいおいしい。

それが、山形県の中でパックに入って売られるようになり、10年ほど前から東北でも食べられるようになり、近年はコンビニで全国的に買えるようにもなった。筆者はコンビニで買うだしなら、Sのがちょうどいいかなと思っている。でも、スーパーで売ってるもののほうが作り手、メーカーがわかるからおいしい気もするし。

 

小さな家庭菜園もってたら、材料は全部取り立てだ。きゅうりをはじめ、素材の野菜の味がしっかりしているから、小さくなっても味はぼやけない。昆布だしにしているという点が、とかく塩分過多と言われる東北地方においても少ない塩分で味わいを出すコツになっている。野菜からも、だし=出汁はでるんだ、うめがすと。

 

文:畠山慧美