「鰆」 薬剤師:白井文隆コラム2
4月となり、春の本格的な始まりを感じさせる時期となりました。
鰆は3月から5月にかけて産卵のために太平洋から瀬戸内海に集まる「春を告げる魚」として親しまれています。豊富に捕れるため関西ではこの時期の鰆を旬とし、柔らかで淡白な味わいが好まれています。
一方、関東では産卵前の脂がのった寒鰆が人気で、12月から2月が旬とされています。冬の鰆はこってりとした濃厚な味わいが楽しめます。
そんな鰆はサバ科に属するいわゆる青魚です。そのため、DHA、EPAが多く含まれています。
今回は鰆に含まれているDHA、EPAについて深堀していきたいと思います。
・DHA
DHAはオメガ-3脂肪酸に属する不飽和脂肪酸です。
体内で合成することが出来ないので食事等から摂取する必要があります。
また、DHAは脂溶性が高いため、脳にある血液脳関門(BBB)を容易に通過することが出来ます。
そのため、脳神経の機能維持や認知機能の向上に寄与します。
また、目の網膜にも必要な栄養素となっており、視覚機能の維持や黄斑変性症などの網膜疾患に対する防御効果も期待されています。
・EPA
EPAもオメガ-3脂肪酸に属する不飽和脂肪酸で、体内で合成することが出来ないため、食事等から摂取する必要があります。
主に脂質代謝の調節と血小板凝集を抑制する効果があります。
脂質代謝の調節に関して、脂質合成系の酵素活性の働きを抑制し、中性脂肪(TG)の生成を抑制します。また、リポたんぱく質リパーセ(LPL)と呼ばれる中性脂肪を分解する酵素を活性化させることにより、中性脂肪の分解を促進させます。
血小板凝集を抑制に関して、EPAは体内でアラキドン酸という抗血小板作用に必要な物質の前駆体に置き換わります。
さらにアラキドン酸が退社されると、PGI3やTXA3など抗血小板作用を示す物質となります。
いかがでしたでしょうか。
旬である鰆には美味しさと体にうれしい栄養が詰まっています。
4月は桜が美しく咲き、日本各地でお花見を楽しむ季節です。この時期は日本の伝統行事と共に、旬の食材を味わう良い機会でもあります。春の息吹を感じさせる食卓には、桜と共に鰆(さわら)を味わうのはいかがでしょうか
白井文隆