「ゴーヤ」薬剤師:白井文隆コラム6
7月に入り、いよいよ夏本番。日差しは一層強くなり、冷たい飲み物や涼を求めることが多くなる季節がやってきました。
そんな暑さが続く中、夏バテ防止や疲労回復に役立つ食材として注目されるのが「ゴーヤ」です。独特の苦味には、暑さで弱った体を元気にする栄養素が豊富に含まれています。
今回は、栄養素でも特に注目されるビタミンC、カリウム、食物繊維(不溶性食物繊維)、モモルデシンについて詳しく見ていきましょう。
【ビタミンC】
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。 皮膚や骨、血管などの構造を支えるコラーゲンの合成には、ビタミンCが不可欠です。 具体的には、コラーゲンの主要成分であるアミノ酸・ヒドロキシプロリンが生成される際、プロリンというアミノ酸を水酸化する酵素の補酵素として働きます。
またビタミンCには、抗酸化作用という重要な働きもあります。 私たちの体内では日々「フリーラジカル」と呼ばれる活性の高い分子が生成され、細胞のダメージや老化、生活習慣病を引き起こす原因となります。 ビタミンCはその還元力によってフリーラジカルを除去し、体を守ります。 さらに、鉄分の吸収もサポートします。 食品中の鉄には吸収しやすいヘム鉄(肉・魚など)と吸収が難しい非ヘム鉄(野菜・穀物など)があり、特に非ヘム鉄は吸収率が低いのですが、ビタミンCはこれを吸収されやすい2価の鉄(Fe²⁺)へと還元し、小腸での鉄分吸収を助ける働きをしています。これにより全身に運ぶ酸素量が増えるため疲労を感じづらくなります。
【カリウム】
カリウムは細胞内に多く存在し、細胞内外の浸透圧の調整や水分バランスの維持に関わる重要なミネラルです。
体内におけるカリウムとナトリウムのバランスが崩れると、水分の排出が滞り、むくみや倦怠感の原因となることがあります。
カリウムは体内のナトリウムを体内の余分な水分と一緒に排出するのを助け、むくみの解消に寄与します。
これにより、体内の水分調節機能が整い、暑さによって引き起こされやすい“だるさ”や“全身の不快感”を緩和する効果が期待されます。
【食物繊維(不溶性食物繊維)】
食物繊維とは炭水化物のうち、消化管で消化できない成分のことをいいます。(消化管で消化できる成分を糖質といいます。)
また、食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2つに分類され、ゴーヤには不溶性食物繊維が多く含まれています。
不溶性食物繊維は保水性、膨潤性があるため、大腸で水分を吸収し便の「かさ」を増すことで腸の蠕動運動を促し、便通を促進する効果があります。
また、少量ですが、水溶性食物繊維も含まれており、腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える作用もあります。
これにより、夏場の腸内環境悪化に効果を持ちます。
【モモルデシン】
モモルデシンはゴーヤに含まれる苦味成分です。
この成分は苦味受容体を刺激することで胃酸(胃液)分泌を促進させます。
これにより胃運動が増加されることで食欲が増進します。
夏バテや胃腸の不調、だるさが気になるこの季節。ゴーヤは、ビタミンCやカリウム、不溶性食物繊維、そして特有の苦味成分モモルデシンといった、夏の体を内側から整えてくれる栄養素をバランスよく含んだ頼もしい食材です。
食欲が落ちやすい時期こそ、ゴーヤをうまく取り入れて、元気に夏を乗り切りましょう。