「松茸」薬剤師:白井文隆コラム9
10月に入り、空気が少しひんやりとしてきて、服装も一枚上に羽織るかどうか迷うような季節となってきました。
ひんやりしてくると食卓にも香りの主役を迎えたくなります。
今月はふたを開けた瞬間に秋が立ちのぼる「松茸」をピックアップしたいと思います。
松茸は香りだけではなく、栄養素も沢山含まれています。
今回は、松茸に含まれている栄養素の中でも、特に注目されているビタミンD、ナイアシン、食物繊維、マツタケオールの効果について詳しく見ていきましょう。
【ビタミンD】
ビタミンDは脂溶性ビタミンの1種になります。
主に、骨の健康を保つためには必要不可欠な栄養素となります。
ビタミンDは体内に吸収されると、腎臓で活性型ビタミンD3となり生理活性作用を示します。
活性型ビタミンDは主に小腸でカルシウムとリンの吸収を促進させます。
吸収されたカルシウムは骨へ沈着することで骨形成を促進させ、骨密度を増加させます。
また、リンは骨の成分であるヒドロキシアパタイトを構成するために必要な栄養素となります。
【ナイアシン】
ナイアシンは水溶性ビタミンに分類される栄養素です。
体内ではNAD⁺ / NADP⁺といった活性型へと変換され、主にエネルギー産生に関与しています。
私たちの体がATPを産生するには、糖質、脂質、たんぱく質から電子を受け取り、解糖系→クエン酸回路→電子伝達系という一連の代謝経路に受け渡す必要があります。
ナイアシンは電子の運び屋(補酵素)として働き、糖質・脂質・たんぱく質から取り出した電子を受け取り、それをエネルギー産生の回路に橋渡しする役割を担っています。
これにより、ATP産生を助け、疲労回復やエネルギー代謝のサポートに重要な役割を果たしています。
【食物繊維】
松茸には食物繊維の中でも特にβグルカンを多く含んでいます。
βグルカンはキノコや酵母などに含まれる成分でグルコースがβ結合して連なった多糖類になります。
体内で免疫を担当するマクロファージ、樹状細胞、好中球を刺激し、サイトカインという免疫を担当する物質の生成を促進させることで免疫力を向上してくれる働きがあります。
【マツタケオール】
マツタケオール(1-オクテン-3-オール)は松茸の独特な香りを特徴づける揮発成分の1種です。
このマツタケオールと桂皮酸メチルがいわゆる松茸の独特なにおいを形成しており、食欲増進などの役割を担っています。
“秋の顔”ともいえる松茸は、香りで季節を連れてくるだけでなく、骨の健康やエネルギー代謝、免疫のコンディションづくりにも寄り添う食材です。
今月は香りを上手に引き出す調理で、旬の一皿を楽しんでみませんか。