「ゆず」薬剤師:白井文隆コラム⑪
12月になり、本格的な寒さがやってきました。
今年はインフルエンザも早い時期から流行しており、寒さに加えて空気も乾燥しやすい季節です。体調管理にはいつも以上に気をつけたいです。
そんな冬に旬を迎えるのが「ゆず」です。
ゆずにはビタミンや食物繊維など、冬に不足しがちな栄養素がたっぷり含まれています。

ここでは、ゆずに含まれる代表的な成分として、ビタミンC・クエン酸・ヘスペリジン・リモネン・食物繊維の5つをピックアップしてご紹介します。
【ビタミンC】
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、体内でつくることができないため、食事からとる必要がある栄養素です。
主な働きは2つあります。
- コラーゲンの合成を助ける
皮膚・骨・血管などの構造を支えるたんぱく質「コラーゲン」をつくるときに欠かせないのがビタミンCです。
そのため、肌や血管、骨の健康維持に役立ちます。 - 抗酸化作用で体を守る
体の中では日々「活性酸素(フリーラジカル)」が発生し、細胞を傷つける原因になります。
ビタミンCにはこの活性酸素を抑える抗酸化作用があり、体を酸化ストレスから守る働きがあります。
【クエン酸】
クエン酸は、柑橘類に多く含まれる酸味のもととなる有機酸の一種です。
レモンやグレープフルーツなどと同じように、ゆずの爽やかな酸っぱさにもクエン酸が関わっています。
クエン酸は「抗疲労成分」としても知られており、主に次のような働きがあります。
- エネルギー産生(ATP産生)を助ける
私たちの体は、糖や脂肪を分解して「ATP」と呼ばれるエネルギーをつくり出しています。
このとき働いているのが「TCA回路」と呼ばれる代謝の流れで、クエン酸はこのTCA回路の中で重要な役割を担っています。
クエン酸をしっかりとることで、エネルギーを効率よく生み出しやすくなり、疲労回復につながります。 - 乳酸の蓄積をおさえる
疲れているときは、筋肉の中に「乳酸」がたまりやすくなります。
クエン酸が十分にあると、TCA回路がスムーズに回り、乳酸が再びエネルギー源として利用されやすくなります。
その結果、乳酸の蓄積が抑えられ、だるさや疲労感の軽減が期待できます。
【ヘスペリジン】
ヘスペリジンは、ゆずの皮や薄皮の部分に多く含まれるフラボノイドという成分で、
「ビタミンP」と呼ばれることもあります。
主な働きは次の2つです。
- 抗酸化作用
ビタミンCと同じく、活性酸素を除去して体を酸化ストレスから守る働きがあります。 - 血行改善作用
毛細血管を丈夫にし、血管の透過性(血液や水分がしみ出す程度)を正常に保つとされています。
その結果、血行がよくなり、冷えやむくみの軽減にも役立つと考えられています。
【リモネン】
リモネンは、柑橘類の皮の部分に多く含まれる精油成分(香りの成分)で、モノテルペン類と呼ばれる仲間の一つです。
ゆずのさわやかな香りにも、このリモネンが大きく関わっています。
リモネンには主に次のような働きがあります。
- 抗炎症作用
炎症を引き起こす物質(サイトカイン)の産生を抑えることで、体の中の炎症反応を和らげる働きが期待されています。 - 抗酸化作用
ビタミンCやヘスペリジンと同様に、活性酸素を抑える抗酸化作用を持ち、
体の酸化ストレスを軽減するのに役立ちます。
これらの作用を通して、免疫機能の調整やアレルギー症状の軽減が期待できます。
【食物繊維(ペクチン)】
ゆずには、ペクチンという水溶性食物繊維が含まれています。
ペクチンには大きく分けて2つの働きがあります。
- ゲル化作用
ペクチンは胃や腸の中で水分を吸って、ゼリー状(ゲル状)に変化します。
このゲルが、腸の中をゆっくりと流れることで、栄養素の吸収をゆるやかにしたり、お腹にたまりやすくするなどの効果が期待できます。 - 腸内環境の改善
ペクチンは「発酵性食物繊維」として腸内細菌のエサになり、発酵される過程で短鎖脂肪酸という物質がつくられます。
短鎖脂肪酸は善玉菌の栄養源となり、善玉菌を増やすことで、腸内環境の改善や、
便通の改善にもつながります。
また、便のかさを増やすことで、スムーズな排便を助けてくれます。
いかがでしたでしょうか。
冬の寒さが厳しくなるこの時期、ゆずは体をぽかぽかと温めてくれるだけでなく、
ビタミンCやクエン酸、ヘスペリジン、リモネン、食物繊維など、体の内側から元気をサポートしてくれる成分がたくさん含まれています。
ゆず茶や煮物や鍋の香りづけなど、日々の食事や飲み物に、ぜひ「ゆず」を取り入れてみてはいかがでしょうか。




