いのちをいただく③ ~お天道様に感謝~


このコラムのベースとなっている『自然療法』の著者、東城百合子さんの言葉の中には『お天道様』という言葉が頻繁に出てきます。

私は最初、お天道様は太陽のことだと思っていましたが、本を読みすすめていくうちに、実は、『自然で最も偉大な力、命のもと』、また『太陽をも育てた命の根源』の象徴であることが分かりました。
分かりやすく言うと、お天道様は現代人が忘れかけている日本人の精神とでも言うのでしょうか。

 

でも今はどうでしょう。東城百合子さんはこう言っています。


「現代は生活がない。食事にしても今は添加物があるし、チンする機械もある。食べるものを通じて命を見るということがないでしょう。命とか心とか魂とか、そういう人間の根っこが分からない。だからお互いに挨拶もしない。子供たちはそれを見て育つから、人を平気で殺すでしょう。人間の命をただの物としか見ない」


ここで言っている『人の根っこ』というのは、小さい頃の親の教育や環境、しつけのことなんだろうと思います。根っこをしっかり持つことで、そこから人の痛みが分かったり、自分の才能を伸ばす力が身に付いたり、という枝葉が育っていく。根っこの部分が腐っていると、人生の途中で病気や人間関係などのトラブルが起きやすくなってしまう。

お天道様精神を忘れてしまうと、心の中までもが蝕まれてしまう。
私はそう理解しました。

 

昔、食べ物を粗末にしていたら、おばあちゃんに『お天道様が見ているから、ちゃんと食べなさい』と言われたことがあります。難しいことは分からないけれど、幼い私はその言葉を自然に受け止められ、妙に納得していたように思います。小さいながら、お天道様の意味を分かっていたのかもしれません。ギリギリそういう思想が通じていた時代だったのでしょうか。

今はそういう教育がないため、『命を見る』ということが分からない。分からないから、お天道様が育てた食べ物、宇宙のエネルギーを抱き込んだ尊い食物を粗末にしてしまう人が多いのではないか。

今を生きる人たちにこんなことを言ったら逆に馬鹿にされてしまうかもしれません。でもお天道様(見えない力や見えない心)を宇宙に置き換えたとき、少し納得するでしょう。私たちも宇宙の中のひとつの生命体なのですから。それを少しでも感じながら生きることで、少しずつ真の『生き方』が見えてくるのではないでしょうか。

 

最後に東城百合子さんの言葉を紹介して今月は終わりたいと思います。


『今の人はそういうことを教わらないで頭の勉強ばかりやって、理屈ばかり強くなっているから何が本当か分からないんです。お金儲けに夢中で家のことを放っぽり投げて、食べるものといったらその辺で買ってきたものばかり。

昔の人は旬のものを大切に調理していただいてきたけれど、今はお腹が一杯になればなんだっていい。日本はもうすっかり変わってしまったんですよ。要するに教育ですよ。教育しなきゃ変わらない。昔はお天道様が見ているって親でも体で納得して子供に伝えてきたんです。今はそれがない。

親が教えないから挨拶だって分からない。礼儀作法だって分からない。一番大事な命だって分からない。ですから、私はこれまでやってきた健康運動にもっと力を入れて、日本人から失われた生活を取り戻したいと願っているんです』。


*引用『自然療法』東城百合子著

文:鈴木久美