ここ数年、街中でハロウィーンの飾りつけをするところが本当に増えましたね。
もともとはケルト族のお祭りだというハロウィーン。日本でいうお盆のようなものだということで、よく見かけるあのかぼちゃの飾りは「ジャックオーランタン」といって、鬼火のようなものだそうですよ。
私はかぼちゃを見るたびに、ある友人と過ごした冬のことを思い出します。
その友人とは、学生の頃のある年、秋のはじめの頃から一緒に暮らし始めました。家族以外と暮らすのはお互い初めて。留学先でルームシェアをすることになりましたが、仲はよくてもやっぱり他人同士。一緒に暮らすのと外で会って遊ぶのとでは訳が違うなと、少しずつお互いがストレスを抱え始めました。
寒くなってきたころ、けんかをしました。
顔を合わせるのはちょっと気が重くて夜遅くに帰宅すると、早寝の彼女はもう寝てしまっていました。おなかがすいたなとキッチンへ行くと、なんだかいい香り。
ふとテーブルの上を見ると手紙がおいてありました。
「かぼちゃのスープを作ったのでよければどうぞ。おすそわけ」
というような内容だったと思います。
コンロには大きなお鍋が置きっぱなしになっていて、開けるときれいなオレンジ色のスープがたっぷり。寒くてかじかんだ手で一口すくって飲んでみて、その素朴でまろやかな味に、思わず涙が出ました。
温めなおし、お皿によそって、ゆっくり味わいながら飲んだあのスープの味を私はずっと忘れることはないと思います。一緒に暮らすことにしたこの友人の、やさしさや素直で丁寧な性格がスープにあらわれているようでした。
その翌日から、なんとなく仲直りした私たちは、その冬何度も一緒に、かぼちゃスープを作って飲みました。寒い夜、一緒にスープを飲みながらDVDで映画鑑賞をしたり、音楽を聴いたり、たわいもないおしゃべりをたくさんしたり。
今でも美味しそうなかぼちゃを見ると、思わず彼女に連絡をしたりします。今ではお互い家庭がありそれほど会う機会もなくなりましたが、今年の冬は美味しいかぼちゃスープを作って彼女とその家族を家にお招きしようかなと思っています。
【かぼちゃスープの作り方】
- かぼちゃを一口大に切って、ラップしてレンジにかける
- 鍋で薄切りにした玉ねぎをバターで炒める
- 玉ねぎを炒めたところにかぼちゃを加えてつぶしながら火にかける
- 牛乳とコンソメを加えてとろとろになるまで火にかけたら、粗熱をとってミキサーにかける
- ミキサーから鍋にうつし、お好みの濃さになるよう牛乳を入れて温め完成
文:柏木望