1、養生とは
「養生」とは、その文字通り「生命(いのち)を養う」ことです。
漢方の中では、「生命力=自然治癒力」を高めていくという位置に「養生」があります。
人間も自然の一部であり、自然のリズムに沿って生きていくことで真の健康が得られます。
朝太陽光に当たると、セロトニンという体内時計の役割をしている物質が正常に働き、活気あふれた一日になります。それから、13~15時間後には自然と眠くなります。
例えば、朝6時に起きて太陽光に当たると、20時~21時に就寝できる毎日のサイクルが出来上がります。それによって、体調も保たれます。逆に、自然のリズムに逆らって、夜型生活をしていると、すべてにおいて身体のリズムが整うことはありません。
2、貝原益軒の養生訓
この「養生」の元になった文研があります。
人生50年と言われた江戸時代に84歳まで長生きした儒学者・貝原益軒が書いた研究指南書「養生訓」です。
『養生とは持続が大切。大抵のことは、努力して続けていけば、必ずよい結果が得られる。たとえば、春に種をまいて春に養分を与えれば、秋になって必ず収穫が多いようなものである。もし、養生の術を努めて学び、長い期間実行すれば、身体は丈夫になって病気もせず、天寿を全うし、長いこと人生を楽しめるのは、当然のことである。この道理を疑ってはならない。』
(参考文献:日本理論社 松原光伸・訳注)
とはいえ、江戸時代とはまるっきり違う現代社会において、太陽が昇ると同時に起きて、沈むと同時に眠ることは難しくなりました。働き方改革と銘打った政府が提唱する暮らし方でも、昼間働くだけでなく、何交代化にわけて、1日24時間の中の何時間を労働時間にしてもよいことになっています。
また、エアコンの普及によって、生活の場も職場も一年中常に一定温度に保たれた中で暮らしています。だから、ちょっとだけ外出した際に、本来自然が持つ外気温に身体を合わせることができず、風邪を引いたりなどの身体のバランスを崩しがちになるのです。
3、心の養生
動きの面での生活ばかりでは、ありません。
心の問題もあります。
現代はストレス社会です。
しかし、この「ストレス」についていったいなにかと追究していくと「なにものかわからない不快な状態」としか解明されていないのです。ストレスで体調を崩したと言うことは、なんだかわからないけど、体調がすぐれないという意味なのです。
「養生」には、生活時間や環境だけでなく、心の「養生」も含まれています。ストレスがなるべくない、自分自身が生きやすい環境の中で生きることが、心の「養生」にもなるのです。
日本には四季があります。それを意識しながら、なるべく四季に合った生活と気持ちを保ち続けていくこと。「養生」には、まずそういった小さな志が必要なのかもしれません。