1、薬膳とは
「薬膳」とは、実は、オーダーメイドの食事(施膳)です。漢方の理論に基づいて、季節や体質、今起こっている症状やその日の体調などに合わせて組み立てる献立のことを言います。昨今では、「食育」という言葉で指導されることもあります。
「漢方」を「漢方薬」ととらえている人は、薬膳料理のことを「漢方薬が入った、薬でできた料理」と思うかもしれません。しかし、それは正しいとは言えません。薬膳の考え方として、薬も食材もどちらも食べ物であり、区別はしないという点が始発だからです。
2、薬食同源
食べ物を一つの薬として使う場合があります。
ジャガイモしかり生姜しかりです。もともとは普通に食べられて、その結果として効能や毒性などが発見され、身体によい変化を与えるものが「薬」として利用されてきました。
同じ食べ物でも目的に応じて「薬」にもなり、「食材」にもなる。「薬食同源」が薬膳の根本的な考え方です。
こんな考え方もあります。
- 食材:空腹を満たすために食べるもの。食べ物としての価値が明確なもの(穀物、いも、野菜など)。
- 食薬:食材と生薬の両方で使用できるもの(山芋=山薬、しょうが=生姜、シナモン=桂皮)。
- 生薬:薬効が目立つもの。病気を治療するために食するもの(麻黄…発刊を促す。大黄…排便を促す)。
日々食卓に上るもので、予防薬の代わりとなって身体にしみ込んでいくものもあれば、起きられないような病気をした時だけ口にするものある。それが、薬膳です。
たとえば、ジャガイモという食材があります。ドイツでは主食ですね。日本ではお味噌汁にいれたり蒸かしても食べます。しかし、熱湯などでやけどした時、すりおろして湿布にする(あたたかくなったら取り換える)と、やけどにも効果がありますし、何よりもやけどの痕が付きにくくなります。
おばあちゃんの知恵ならぬ、台所は一つの薬箱でもあるのです。
3、自然との調和
養生では、自然との調和を大切にします。食材の旬の季節や産地を含めて、性質や効能などの理解も必要なのです。
それを薬膳に置き換えると、「いつ(季節や朝昼晩など)」「どこで(寒い地方暑い地方、冷房の効いた部屋暖房の効いた部屋など)」「だれが(生物学的男女、体質、体調、年齢など)」「どのように(温めて冷やして、スープ状にしてなど)食べるのか」「食べ合わせはどうなのか」なども気を付けて調理します。
すると自然に、食べる人一人一人オーダーメイドの料理=薬膳になります。家族は、生活形態がほぼ同じの中で暮らしていますので、食べ物の好みも似てきます。つまりそれぞれの家庭の食卓になります。
1食であっても外食や他の所で食べた場合は、その日に自分が何を食べたかを把握し、1日トータルで過不足を補うことがベストだと考えられます。それが、誰かに作ってもらって食べる薬膳ではなく、自分で補う薬膳の第一歩とも言えるからです。