7.食材の五味:身体に対する「味」のいろいろな作用


1、食材の五味

薬膳における「酸=すっぱい」「苦=にがい」「甘=あまい」「辛=からい」「鯇(かん)=しょっぱい」を、「五味」と呼びます。

味は、栄養素ではないために効能を語られる機会はほとんどありませんが、薬膳や漢方においては大切な要素として存在しています。

〇酸味

酸味には、収斂作用があります(筋肉を引き締め、汗や尿などが出すぎるのを止める)。症状としては、汗かき、下痢、不正出血に効果がみられます。
梅、酢、梅酢(年に1度だけ梅干しを作る際に、梅と塩だけで作り出される民間薬:腹痛などに効く)、桃、レモン、トマトなどが代表的食品です。

〇苦味

苦味には、清熱作用(身体の熱を冷ます)、瀉下作用(便を下して出す)などの効果があります。症状としては、便秘、発熱、目の充血、皮膚の赤身などに効果がみられます。
にがうり、うど、緑茶、菊花、どくだみなどが代表的食品です。

〇甘味

甘味には、捕益作用(滋養強壮)、緩和作用(痛みを止め、緊張を緩める)などの効果があります。症状としては、疲労倦怠などに効果絶大です。
なつめ、玄米、はちみつ、大豆、とうもろこし、かぼちゃ、くりなどが代表的食品です。

〇辛味

辛味には、発散作用(滞っているものを発散させ、気血の流れを良くする)などの効果があります。症状としては、かぜや消化不良などに効果を発揮します。
ねぎ、しょうが、にんにく、しそ、だいこん、シナモンなどが代表的食品です。

〇鹹味=塩味

鹹味には、軟堅作用(かたいものをやわらかくする)、潤下作用(便通を良くする)などの効果があります。症状としては、便秘、腫瘍、イボなどに効果があります。
くらげ、かに、のり、昆布などが代表的食品です。

2、五味を取り過ぎた場合の症状例

ただし、なににでも適量があります。この五味を取り過ぎた場合の症状を記します。

〇酸味

汗をかきにくくなる。便秘になりやすい~収斂作用が効きすぎるから。

〇苦味

体が冷えやすくなる。皮膚が乾燥する~体を冷やし過ぎて体液の流れが悪くなる。

〇甘味

骨が弱くなる。むくみや肥満になりやすい~体内の緊張を弱めるので、巡りも悪くなる。

〇辛味

怒りっぽくなる。爪が割れやすい~発散し過ぎて残りのエネルギーが乏しくなる。

〇鹹味

むくみやすい。動悸が出やすい~水分を体内に取り込みすぎる作用が働くため。

 

 

食材そのものでは、味気がないために、調味料や食品を組み合わせることで独特の味を生み出しているのです。その生み出した味で、体調がおかしくなることがあってはなりません。

薬膳は、なにものも、ほどほど、適量の教えでもあるのです。

≪6.食材の五性 8.食材の帰経≫