8.食材の帰経:気になる症状は、どの五臓が原因で起こるのか


1、食材の帰経

生薬や食材がどの「五臓」に優先して作用するかを「帰経」と言います。

気になる症状が、どの五臓のトラブルが原因で起こるのかがわかれば、そこにあった生薬や食材を用いればいいことになりますね。

梨とりんごは、同じ季節に出回り始めます(地場では、梨の終わりに、りんごが間に合うといった状況でしょうか)。二つとも四気は「涼」で五味が「酸・甘」です。しかし、帰経が違うので身体に入ってからの作用は当然異なります。

梨は、五臓の「肺」に入り、肺の熱を冷まして潤すので、発熱後の喉の渇きや空咳によいのです。りんごは「脾」に入ります。「脾」の不調をやわらげ、胃腸トラブル対策をします。

帰経というのは、長期にわたって、人類が飲んだり食べたりした状態と効果を観察して、経験値として積み重ねられたなかから得た結論とも言えます。

2、五臓の働きと不調

『肝の働きと不調』

肝臓は、身体の肝心要と呼ばれています。体中のさまざまな機能がスムーズい動くように調整したり、気を全身に巡らせる働きがあります。また、血を貯蔵して筋肉や神経をコントロールします。代謝や解毒、排泄などの働きも調整します。肝のバランスが崩れると体内のリズムが乱れて、生理不順や食欲、排便にも顕著な異常がみられるようになります。

〇不調:イライラして怒りっぽくなる。のどや胸のつかえ。目の疲れやドライアイ、視力低下。筋肉のひきつりやこむらがえり、手足の震え。頭痛やめまい、ふらつき。
→五行「木」の列との関係:肝(五臓)、目(五根)、爪(五支)、怒(五志)。

『心の動きと不調』

心臓が動かなくなったら、人間は生きてはいられません。全身に血を送るポンプ機能を果たし、血流を調整します。意識や理性など、思考活動をコントロールします。心のバランスが崩れると、心臓本体の不調や思考の乱れによる不安や不眠があらわれます。

〇不調:動悸息切れ、胸痛など。高血圧や低血圧など血圧が安定しない。不安や不眠、夢が多い(ノンレム睡眠)。のぼせや顔の赤み。もの忘れが多くボーっとする。
→五行「火」の列との関係:心(五臓)、舌(五根)、顔面(五支)、喜(五志)。

『脾の働きと不調』

脾臓は糖尿病の方にとって生命線と呼ばれる大切な臓器です。食べ物の消化や吸収、輸送を調整し、吸収した栄養を全身に振り分ける働きがあります。体の中央で内臓の位置を維持し、血が血管からもれないようにする働きもあります。脾のバランスが崩れると、水分代謝が悪くなり、胃もたれや吐き気、むくみなどで現れます。

〇不調:食欲不振。消化不良、軟便や下痢。唇が荒れたり、口内炎や口元に吹き出物が生じます。胃下垂(内臓加水)や子宮下垂。気力がわかず疲労倦怠感が続きます。
→五行「土」の列との関係:脾(五臓)、口(五根)、唇(五支)、思(五志)。

『肺の働きと不調』

人間の息の出し入れをスムーズに行う大切な臓器です。呼吸と皮膚という体の防衛機能を担っています。呼吸で体内に新鮮な「気」を取り入れ、汚れた「気」を外に出します。体内の水分代謝を助ける働きも実はあります。肺のバランスが崩れると、のどや鼻の症状、皮膚の乾燥などがあらわれます。

〇不調:風邪をひきやすい。鼻水や鼻づまり。咳や痰、喘息。皮膚が弱く乾燥しやすい。アレルギーの症状が出やすい。
→五行「金」の列との関係:肺(五臓)、鼻(五根)、皮毛(五支)、悲(五志)。

『腎の働きと不調』

腎臓がダメになると、人工透析を受けなければなりません。両親から受け継ぐ生命力を蓄え、生長や発育、生殖を担います。全身の水の分布や代謝の調整をします。腎のバランスが崩れると、老化が早まったり、不妊など産科疾患や排尿トラブルなどがあらわれます。

〇不調:足腰のだるさや腰痛。耳鳴りや難聴。白髪や抜け毛が増える。頻尿や夜間尿。勢力の減退、及び不妊。
→五行「水」の列との関係:腎(五臓)、耳(五根)、髪(五支)、恐(五志)。

3、不調から五臓を考える

①目が疲れやすい

目の使い過ぎは「血」を消耗させます。疲れ目は「血虚」の状態。目と深い関連性にある五臓は「肝」。肝は、血液を貯蔵する役割があるため、肝に不調があると、血が不足して目のトラブルが起こってしまうのです。

②むくみやすい

むくみは、体内に余計な「水」が溜まっている状態。消化不良を伴う場合は「脾」の働きが弱ってると考えられます。汗が出ない場合は「肺」。尿の出の悪い場合は「腎」が弱っていると推測されます。

③白髪が気になる。

まだ白髪年齢出ないのに、おしゃれ染めではもう染まらない。噛みにつやがなくなり、抜け毛や白髪が目立つのは、髪と関連する「腎」が弱っているから。ストレスは、老化を進めます。無理のない規則正しい生活リズムを作りましょう。

「五穀は五臓を養い、五果(果物)は五臓を助け、五菜(野菜)は五臓を充実させる」。五臓が働くためには、様々な食材をバランスよく食べることが大切です。

≪7.食材の五味 9.まとめ≫