いのちをいただく① ~時代とともに移り変わる『お母さん像』~


昭和から平成、そして令和へ――。時代が移り変わるごとに私たちの暮らしも豊かになり、便利になりました。でも、それと引き換えに何か大事なものが見えなくなってしまったような気がしてなりません。特に食に関しては時代とともに逆に退化してしまったんじゃないかとさえ感じるのです。

便利さが先に立ち、本来の『食』の重要性が希薄になっているようには思えませんか? …とは言っても、私も若い頃は時間に追われた生活を余儀なくされ、『食』は二の次でした。『お腹が満たされればいい』、『朝食は抜いてでも長く寝ていたい』、これが現実です。そんな私の食に対しての意識が変わりだしたのは、私が『お母さん』という立場になってからだと思います。

『家族全員の食事を作る』ということを『家族全員の健康を守る』に置き換えたとき、事の重大さに気付きました。私がこれから家族の健康を管理しなければならないんだと…。私が子供の頃の『お母さん』は、ほとんどが専業主婦でした。うちの母も例外ではありません。朝起きると台所にはエプロン姿の母親が立っていて、お新香を包丁でトントンと切るリズミカルな音で目を覚ましたのを覚えています。

時代の移り変わりとともに、『お母さん』と呼ばれる人たちも社会へと進出していきます。男女平等の社会が叫ばれ始め、さらには急激に進んだ核家族化や景気悪化などが重なったことに起因するのだと思います。そのうち『エプロン姿のお母さん』が近所からどんどん消えていきました。今まで家族のために朝から晩まで家事をしていたお母さんたちが子供を保育園に預けて社会に出るようになったからです。

そして、今では仕事から帰ったお母さんがササッと作れるような冷凍食品やレトルト食品、またスーパーなどで売られている惣菜が一役買っているというのはなんとも皮肉な話。大事な家族のために頑張って働いているのに、大事な家族のための食事に時間がかけられない…。

要するに『できあい』の食べ物が食卓に多く並ぶようになったのです。けっしてそれが悪いことだとは思いません。時代の変化の中で生きる私たちはそうせざるを得なくなっていました。善し悪しは別としても、食生活を変えてしまったのはそんな時代背景の中で生きている私たち『お母さん』だったのではないかと考えるのです。そしてそれは致し方ないことだったんだと。

前置きが少し長くなってしまいましたが、私が今回、こんなにも食に対して真剣に向き合おうと思ったきっかけをくれたのは、友人から借りた一冊の本『自然療法(東城百合子著)』でした。

この本を読み進めていくうちに、普段口に入れている食材を考え、恐ろしくなりました。毎日、口から入るものがそのまま自分の血となり骨となり、そして命となる。命の源となる『食』とは一体なんなのでしょう。このコラムでは何回かにわたって私が『自然療法』で学んだことを皆さんにお伝えしていきたいと思っています。お伝えするというより、私もまだまだ食に関して未熟者なので一緒に学ぶつもりで書き進めていきたいと思っています。どうぞ最後までお付き合いください。

<自然療法・おススメのレシピ>

大根の青じそ漬け

活性酸素を抑える働きをする他、動脈硬化や心筋梗塞の予防に大変重宝する『青じそ』。青じそは、どうしてもメインの料理としては成り立たないので大根とコラボレーションさせて、さっぱりした漬物を作りました。

大根は主に頭痛、発熱などに効能を発揮します。私もよく風邪のときにはぶつ切りの大根を鰹節と少しのお醤油で食べて、薬なしで毎回治しています。
簡単にできるのでぜひお試し下さい。

大根の青じそ漬け 作り方

文:鈴木久美